
子どもが相続人になった!手続きの注意点を解説
admin
- 0
相続というと大人同士の話のように思われがちですが、実際には子どもが重要な相続人となるケースも少なくありません。特に両親のどちらかが亡くなった場合、子どもは民法上「第一順位の法定相続人」として、配偶者と並んで相続の中心的な立場を担います。
まだ未成年である場合には、親が代理人として手続きを行う必要がありますが、その過程で利益相反や分配割合の問題が生じることもあります。だからこそ、子どもの相続には「権利を守るための仕組み」と「トラブルを防ぐための準備」が欠かせません。
本記事では、子どもの相続に関する基本的なルールと注意点をわかりやすく解説します。
法定相続人はどう決まる?
法定相続人は、大人だけではなく子どもも含まれます。まずは順位の決まり方や、相続分の例について知識を深めていきましょう。
法定相続人とその順位
相続では、まず「誰が相続人になるか(法定相続人)」を確定する必要があります。日本では、配偶者と子どもが第一順位の法定相続人です。被相続人に配偶者がいれば、配偶者と子どもが相続人になります。仮に配偶者がいなければ、すべての遺産を子どもが人数で分割して相続することになります。
子どもが複数いるときは、均等に分割されるのが原則です。ただし、個人の事情や遺言がある場合には異なる分け方も可能です。
相続分の例
仮に配偶者と子ども2人がいるケースでは、法定相続分は「配偶者:1/2」「子どもそれぞれ:1/4ずつ」となります。子どものみが相続人であれば、3人中子ども2人ならば1/2ずつといった分け方です。
ただし、遺言書がある場合は原則としてその内容が尊重されます(遺留分制度に注意)。遺言によって子ども間のトラブルを予防するよう、あらかじめ設計しておくことも可能です。
子ども相続の税負担
子どもが遺産を相続すると、税金が発生するケースがあります。ここでは、対象となる金額の考え方や、税金の計算方法について解説しましょう。
基礎控除と課税対象額
相続税には、遺産税を計算する際にまず差し引かれる「基礎控除」があります。基礎控除額は以下の算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
たとえば、子ども2人と配偶者が法定相続人の場合、法定相続人は3人なので基礎控除額は「3,000 + 600×3 = 4,800万円」となります。遺産総額がこの額以下であれば、相続税は発生しません。
ただし、土地に関して「小規模宅地等の特例」のような制度を使うと、相続税評価額を大きく下げることが可能なケースもあります。
税率と超過累進課税
相続税は超過累進課税で、取得額が大きくなるほど税率も段階的に上がります。目安として、1,000万円以下は10%、3,000万円以下は15%、5,000万円以下は20%、1億円以下は30%といった区分があり、最高税率は55%です。実務ではまず遺産総額から基礎控除などを差し引いて「課税遺産総額」を求め、法定相続分で按分した金額に速算表を当てはめて各人の税額を計算します。
相続税率は超過累進課税方式になっており、取得額が大きいほど税率も高くなります。たとえば、1,000万円以下であれば10%、3,000万円以下だと15%、5,000万円以下は20%、1億円以下は30%などの区分が定められています。最高税率は55%であり、それ以上はかかりません。
未成年の子どもが相続人となる場合の手続き上の注意
未成年の子どもが相続人になると、手続きをするうえで注意する点があります。トラブルなく進めるためには、次の点が重要です。
遺産分割協議と代理・特別代理人
未成年者は法的に自分で遺産分割協議に参加できないため、代わりに法定代理人(通常は親権者)が関与します。
しかし、法定代理人自身が相続人でもある場合、利益相反の問題が生じ得ます。例えば、親が相続人の一人であるケースでは、子どもの代理人として遺産分割に関わると、親の利害と子どもの利害が衝突する恐れがあるためです。
こうした場合には、家庭裁判所へ「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。 特別代理人は、未成年者の利益を守る立場で遺産分割協議に参加します。
利益相反の注意
親が子どもの法定代理人として遺産分割に関わる場合、自らも相続人であると利害が対立し、分配割合などをめぐって紛争に発展するおそれがあります。こうした「利益相反」が生じるケースでは、親権者が子どもの代理を務められないこともあります。
そのため、あらかじめ遺言書を作成し、遺産の分け方や受取人を明確に定めておくことで、トラブルを未然に防ぐことができます。遺言による事前の指定は、家庭裁判所での手続きを回避し、円滑な相続を実現する有効な手段です。
子どもの相続で注意すべきケース
子どもが遺産を相続する場合、注意するべきケースがあります。主なポイントは、次の通りです。
- 未成年者がいるケースの遺産分割…未成年者がいると代理・特別代理人の選任が必要で、手続きが長引くことがある。特に親と子どもが共同相続人である場合、利益相反の問題に注意が必要。
- 共同名義の不動産…子ども複数名義で土地や建物を共有すると、将来売却や活用が難しくなることがある。管理・維持コスト・決断の遅れが摩擦になる可能性も。
- 相続資金の不足…不動産中心の相続で現金が少ないと、相続税や固定資産税の支払いが難しくなるケースがある。生命保険や現金準備をしておくのがおすすめ。
- 相続人間の不公平感・トラブル…分割比率や資産価値評価を巡って子ども間で争いが生じることがある。前記の遺言書や代償金制度、事前話し合いがトラブル予防の鍵。
- 名義変更・登記の放置…名義変更を怠ると、後年売却ができない、銀行手続きが難しいといった障害が出る可能性がある。法改正で登記義務化も進んでいるため注意が必要。
大人とは違い、子ども自力で手続きを進めることが困難です。信頼できる保護者が主導のもと、必要に応じて税理士や弁護士と相談しながら、相続を進めていくことが重要です。
まとめ
法定相続人の範囲や順位を理解することは、相続トラブルを防ぐための基本です。配偶者と子どもが相続の中心となるケースが多い一方、遺言の内容や家族構成によっては、相続割合が変わることもあります。
特に、子どもが複数いる家庭では「平等に分ける」ことが原則ですが、実際には不動産や預貯金の割合調整が必要な場合も少なくありません。あらかじめ家族で話し合い、必要に応じて遺言書を作成しておくことで、円満な相続を実現できます。らかじめ家族で話し合い、必要に応じて遺言書を作成しておくことで、円満な相続を実現できます。