• 2025-10-16
チェックリストと家の模型

相続対象になるものは?見落としやすい項目を知っておこう

相続の手続きでは、「どんな財産が対象になるのか」を正確に把握することが第一歩です。現金や不動産のように明確な資産だけでなく、生命保険金や死亡退職金など、法律上は相続ではないものの「みなし相続財産」として扱われるケースもあります。

また、財産にはプラスのものだけでなく、借入金や未払い税金といったマイナスの財産も含まれます。これらを整理しないまま手続きを進めると、思わぬトラブルや税負担が生じることも。

この記事では、相続の対象となる財産の種類や注意すべきポイントを分かりやすく解説します。

相続の対象になる財産とは

民法では、相続の対象となるのは「被相続人の一身に専属しない一切の権利義務」と定められています(民法第896条)。つまり、「他人に引き継ぐことが可能な財産的価値のあるもの」は、すべて相続財産に含まれます。

相続財産の対象になる財産は、大きく分けるとプラスのものとマイナスのものがあります。ここでは、それぞれに該当する財産について解説しましょう。

プラスの財産

プラスの財産に該当するものと、その内容は次の通りです。

財産の種類内容
現金・預貯金最も一般的な相続財産。銀行・信用金庫・ゆうちょなどにある口座残高のこと。タンス預金やマネー残高が対象になる場合もある。
不動産自宅、土地、賃貸物件、別荘などの不動産が代表的な相続財産。借地権や借家権なども財産として扱うケースもある。
有価証券株式、投資信託、国債、社債など。特に上場株は相続時の市場価格で評価され、相続税の課税対象になる。
動産自動車、貴金属、宝石、美術品、骨董品、ゴルフ会員権など。形のある資産のほか、リユース市場で売却できるコレクションも評価対象。
知的財産権著作権、特許権、商標権なども、権利期間中であれば相続される。音楽家や作家などが著作権収入を得るケースなどが該当する。

銀行口座などは比較的分かりやすい財産ですが、家に眠っている意外なものが 

マイナスの財産

相続は、プラスの財産だけを引き継ぐわけではありません。次のような項目も、相続の対象となります。

財産の種類内容
借入金・ローン住宅ローン、カードローン、事業借入金などは、相続人が返済義務を負う。ただし、住宅ローンに「団体信用生命保険(団信)」が付いている場合、被相続人の死亡によって残債が保険で完済されることもある。
未払いの税金・公共料金所得税、住民税、固定資産税などの未納分は、相続人に支払い義務が生じる。また、電気・ガス・水道・携帯料金などの滞納分も同様に引き継がれる。
保証債務被相続人が他人の借金の保証人であった場合、その保証債務も相続される。
損害賠償義務交通事故や契約違反などで発生していた損害賠償義務も、相続の対象となる。ただし、被相続人本人のみに属する権利義務(例:扶養請求権、婚姻上の権利義務)は相続されない。

特にトラブルになりやすいのが、保証債務です。見落としのないように、入念な調査と管理が重要です。

みなし相続財産とは

法律上は相続ではないものの、実質的に相続と同様の性質を持つ財産もあります。代表的なものに以下の3つがあります。

生命保険金

被相続人が契約者・被保険者であり、相続人が保険金の受取人となっている場合、その保険金は「相続財産」とみなされ、相続税の課税対象となります。

ただし、生命保険には特例として「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。相続人が複数いる場合や保険金の金額が一定以下であれば、相続税がかからないケースも多く、実際の税負担は軽減されることが一般的です。計算時には他の遺産と合算して課税額を算出する必要がある点に注意しましょう。

死亡退職金

会社員や公務員が亡くなった際、勤務先から遺族に支払われる「死亡退職金」も、相続税の計算上は相続財産とみなされます。これは、本人の生前の勤務に対する功労金的な性格を持つものですが、実質的には相続によって取得する財産と考えられるためです。

注意点としては、生命保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が設けられていることです。そのため、相続人が複数いる場合には、一定額までの死亡退職金は相続税の対象外となり、税負担を大きく軽減できる可能性があります。

信託財産・死亡給付金

企業型年金や共済などから支払われる「死亡給付金」も、受取人が指定されている場合には相続税の課税対象となります。これらの給付金は、被相続人が生前に積み立てていた掛金や勤務実績に基づいて支払われるため、実質的に被相続人の財産の一部とみなされます。

なお、受取人が法定相続人である場合には、生命保険金や死亡退職金と同様に「500万円×法定相続人の数」の非課税枠が適用されるケースもあります。制度や契約内容によって扱いが異なるため、詳細は支給元や税理士に確認することが重要です。

相続財産調査のポイント

実際の相続では、「何があるのか分からない」「どの口座にいくらあるのか不明」といったケースが多く見られます。調査の際は、以下の点を押さえておきましょう。

  1. 通帳・保険証券・権利証などを整理する
  2. 金融機関・証券会社に照会をかける
  3. 不動産登記簿や固定資産税通知書で所有物件を確認する
  4. クレジットカードの引き落とし明細から債務を把握する
  5. 生命保険会社や勤務先からの給付金を確認する

これらを明確にすることで、相続手続き全体のトラブルを防ぐことができます。

まとめ

相続の対象となる財産は、現金や不動産などの明確な資産にとどまらず、生命保険金や死亡退職金、企業年金の死亡給付金なども含まれます。

また、借入金や保証債務などのマイナスの財産も忘れてはなりません。正確な相続財産の把握は、遺産分割や相続税の計算を円滑に進めるための基盤です。

通帳や保険証券、権利証などを整理し、必要に応じて金融機関や税理士へ確認を行うことで、トラブルのない相続手続きを実現できます。早めの準備と情報整理が、安心の相続への第一歩です。