• 2026-02-12
通帳、印鑑

名義預金とは?相続財産になるケースと見分けるポイントを解説

親が子どもや孫の名義で預金していても、そのお金が名義人本人の財産とは限りません。相続時には、口座の名義だけではなく、誰がお金を出したのか、誰が管理していたのか、贈与の事実があったのかといった事情を確認する必要があります。

国税庁も、被相続人以外の名義であっても、被相続人が資金を拠出しているなど、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になると説明しています。

この記事では、いわゆる名義預金の基本的な考え方と、相続財産になる可能性があるケース、確認しておきたいポイントを整理します。家族名義の預金が気になっている方は、まず資金の出所と管理状況から確認してみましょう。

名義預金とはどのような預金なのか

名義預金という言葉は、口座の名義人と、実際に資金を出した人や管理していた人が異なる預金を説明する際に使われます。

相続では、通帳に記載された名前だけで財産の持ち主を判断できるとは限りません。実際に誰の資金で作られ、誰が管理していたのかという事実関係も重要です。まずは、名義預金が問題になりやすい場面から見ていきます。

口座の名義だけで財産の持ち主が決まるとは限らない

たとえば、父親が自分の収入からお金を出し、子どもの名義で定期預金を作ったケースを考えてみましょう。通帳や証書を父親が保管し、その後も父親自身が預金を管理していた場合、名義だけを見れば子どもの口座です。しかし、相続税の対象かどうかは、名義だけで判断されるものではありません。

国税庁の「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集」では、父親の収入から預け入れ、父親が管理・運用していた子名義の定期預金について、被相続人の財産と認められる場合は相続税の課税対象になると示されています。

国税庁「相続税の申告書作成時の誤りやすい事例集 被相続人以外の名義の財産(預貯金)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/sozoku-tokushu/souzoku-ayamarijireishu/ayamarijirei6.pdf
(最終確認日:2026-08-21)

つまり、「子どもの名前で口座を作ったから、子どもの財産になっている」とは限りません。資金を出した人や管理していた人など、実際の状況を確認する必要があります。

相続財産には預貯金以外にも、有価証券や不動産などが含まれます。財産全体を整理したい場合は、相続対象になるものは?見落としやすい項目を知っておこうも参考になります。

親が子どもや孫の名義で貯めているケース

子どもや孫の将来のために、親や祖父母が家族名義の口座へお金を積み立てることがあります。こうした預金があるからといって、その事実だけで名義預金と判断することはできません。確認したいのは、誰のお金を使って口座を作ったのか、その後は誰が管理していたのかという点です。

たとえば、親の収入から継続的に入金し、通帳や印鑑も親が保管しているケースがあります。一方で、実際に子どもへ財産を渡し、その後は子ども自身が管理している場合は、事情が異なります。

ここでよくある誤解が、「子ども名義の口座へ入金すれば、それだけで贈与になる」という考え方です。国税庁は、贈与税について、個人から贈与によって財産を取得した場合に課税される税金と説明しています。また、贈与による財産の取得時期についても、贈与の方法に応じた考え方を示しています。

そのため、口座名義を変えたことや、家族名義の口座へ入金したことだけで、贈与が成立したかどうかを判断するのは避ける必要があります。相続時には、預金を作った経緯や管理状況も含めて整理しましょう。

名義預金が相続時に問題になりやすい理由

相続が始まると、亡くなった人が所有していた財産を確認し、相続財産として整理する必要があります。国税庁によると、相続税の対象となる財産には、現金や預貯金、有価証券、不動産など、金銭に見積もることのできる経済的価値のある財産が含まれます。

国税庁「No.4105 相続税がかかる財産」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4105.htm
(最終確認日:2026-08-21)

このとき、亡くなった人の名義になっている口座だけを確認すると、家族名義で管理していた預金を見落とす可能性があります。

「本人名義ではない口座は相続財産に含まれない」という考え方も、注意したい誤解の一つです。国税庁の事例では、被相続人以外の名義であっても、被相続人が取得などのための資金を拠出していたことから、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になると説明されています。

そのため、相続財産を整理するときは、名義だけを見て対象から外すのではなく、家族名義の預金についても資金の経緯を確認しておくことが重要です。

名義預金か確認するときに見ておきたいポイント

家族名義の預金を見つけても、「この条件に当てはまるから名義預金」と機械的に判断することは避けましょう。

国税庁が示す事例では、誰が資金を出したのか、誰が管理・運用していたのか、贈与を受けていたかといった事情が確認されています。まずはこれらの情報を整理し、預金が作られた経緯を把握していきます。

預金の元となったお金を誰が出したか

最初に確認したいのが、預金に入っているお金の出所です。子どもの名義であっても、入金されている資金が親の給与や年金などから出ていたのであれば、その経緯を確認する必要があります。反対に、子ども自身が得た収入を預けている場合は、状況が異なります。

ただし、「親がお金を出したから名義預金」と一つの事情だけで結論を出すのは適切ではありません。実際に贈与が行われていた可能性もあるため、その後の管理状況や、財産を渡した経緯も合わせて確認する必要があります。

資金の流れを整理するときは、通帳の履歴だけを見るのではなく、「いつ」「誰のお金を」「どのような目的で」移したのかを確認しておくと、状況を把握しやすくなります。

通帳や印鑑などを誰が管理していたか

次に確認したいのは、口座を実際に管理していた人です。国税庁が示す事例では、父親の資金から作られた子名義の定期預金について、父親自身が管理・運用していたという事情が挙げられています。

そのため、通帳や定期預金証書、口座に関する情報などを誰が管理していたのかは、預金の経緯を確認する際の一つの材料になります。

一方で、「親が通帳を管理していたら名義預金になる」と一つの条件だけで判断できることを示す一次情報は、現時点で公式確認は取れていません。資金の出所や贈与の有無など、複数の事情を合わせて確認する必要があります。

家族の口座を整理することは、相続に備えるだけでなく、現在の資産状況を把握するきっかけにもなります。資産管理アプリとは?注目される理由とメリットの解説も、日頃の資産管理を見直す際の参考にできます。

名義人が預金や贈与を認識していたか

もう一つ確認しておきたいのが、名義人本人が、その預金や財産の移転についてどのように認識していたかです。国税庁の事例では、子名義の定期預金について、子自身が過去に贈与を受けていなかったという事情も示されています。

ただし、「本人が知っていれば贈与」「知らなければ名義預金」と単純に分けられるわけではありません。国税庁の公表情報からも、その一つの事情だけで一律に判断できるとの公式確認は取れていません。国税庁は、贈与税について、個人から贈与によって財産を取得した場合にかかる税金と説明しています。

国税庁「No.4402 贈与税がかかる場合」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
(最終確認日:2026-08-21)

そのため、名義人が預金を知っていたかどうかだけでなく、どのような経緯で財産を移したのかまで整理しておきましょう。

生前の財産移転について詳しく確認したい場合は、家族信託と生前贈与の違いは?暦年贈与との使い分けを解説も併せて確認すると、制度ごとの違いを整理しやすくなります。

相続に備えて家族の預金を整理しておこう

名義預金について考える目的は、自分だけで税務上の判定をすることではありません。まずは家族が保有する預金について、口座名義と実際の資金管理がどのような状態になっているのかを把握しておきましょう。

相続が始まってから過去の資金移動を確認しようとしても、口座を作った目的や当時の状況が分からないことがあります。生前から資金の出所や管理状況を整理しておけば、家族が財産の経緯を確認するときにも役立ちます。

家族名義の口座も含めて資金の流れを確認する

資産を整理するときは、自分名義の口座だけでなく、自分がお金を出して作った家族名義の口座がないかも確認してみましょう。

確認したいのは、口座名義だけではありません。「誰のお金を使ったのか」「何のために口座を作ったのか」「誰が管理しているのか」といった情報も整理します。過去の入出金について確認できる資料がある場合は、資金の経緯を振り返る手掛かりになります。

ただし、家族で資産情報を共有するときに、口座番号や暗証番号などの情報まで一つのメモへまとめる必要はありません。資産の存在や経緯を確認するための情報と、慎重に管理すべき情報は分けて扱いましょう。資金の状況を整理する際は、次のようなメモを利用できます。

【資産整理メモ】

金融機関名:
口座名義:
資金を出した人:
口座を作った目的:
通帳などを管理している人:
家族へ伝えている内容:
備考:

このメモは、名義預金かどうかを判定するための書類ではありません。口座が作られた経緯や現在の管理状況を、後から確認しやすくするための整理資料として利用するものです。

贈与したつもりだけで判断しない

家族名義の口座を整理するときに注意したいのが、「子どもの口座へお金を移したので、贈与についても整理できている」という考え方です。

国税庁は、贈与による財産の取得時期について、書面による贈与の場合は贈与契約の効力が発生した時、書面によらない贈与の場合は贈与の履行があった時などと説明しています。

国税庁「贈与による財産の取得時期」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402_qa.htm
(最終確認日:2026-08-21)

そのため、「家族名義の口座へ振り込んだ」「口座の名義を変えた」といった一つの事実だけをもとに、贈与や相続税上の扱いを判断することは避けましょう。財産を移した経緯や、その後の管理状況なども合わせて整理する必要があります。

生前の資産移転について検討している場合は、暦年贈与を活用した家族信託の方法も参考にしながら、制度や手続きの違いを確認しておきましょう。

判断が難しい場合は事実関係を整理してから確認する

家族名義の預金について判断に迷った場合は、最初から「これは名義預金なのか」と結論だけを求めるのではなく、事実関係を時系列で整理します。

確認しておきたいのは、口座を作った時期、資金を出した人、口座を作った目的、その後の管理状況、名義人へ財産を渡した経緯などです。こうした情報が整理されていれば、家族や専門家に状況を説明するときにも役立ちます。税務上の扱いについて確認する必要がある場合は、次のような文面を下書きとして利用できます。

【確認用メモ】

「〇年ごろに〇〇名義の口座を作りました。入金した資金は〇〇の収入から出しています。通帳などは現在〇〇が管理しています。口座を作った目的は〇〇です。名義人への贈与については〇〇という経緯があります。この状況を踏まえ、相続財産や贈与としてどのような点を確認すべきか教えてください。」

この文面も、名義預金を判定するためのものではありません。事実関係を整理し、必要な確認をしやすくするためのテンプレートです。

相続税や贈与税の扱いは、個別の事情によって異なる可能性があります。申告などに関係する判断が必要な場合は、自分だけで結論を出さず、国税庁が案内する相談窓口や税理士などへ、整理した事実関係を示して確認する方法があります。

まとめ

名義預金について確認するときは、口座に記載された名義だけで財産の持ち主を判断しないことが重要です。国税庁も、被相続人以外の名義であっても、被相続人が資金を拠出しているなど、被相続人の財産と認められるものは相続税の課税対象になると説明しています。

一方で、資金を出した人や通帳を管理していた人など、一つの事情だけから名義預金かどうかを一律に判断することも避ける必要があります。資金の出所や管理状況、財産を移した経緯などを整理したうえで確認しましょう。

次にやるべき順番は、1つ目に家族名義を含めて預金を洗い出す、2つ目に資金の出所・口座を作った目的・管理状況を記録する、3つ目に税務上の判断が必要なものを一次情報や専門家へ確認するという流れです。

まずは家族のお金が「どこにあり、どのような経緯で作られ、誰が管理しているのか」を整理するところから始めてみましょう。